心に関する話

本人には聞けない・・・胃ガン患者が「つらい」と感じる場面と対処法

「当たり前にできること」ができなくなったとき

切除する部分や範囲にもよりますが、胃を切除した後は、やはり以前の生活とは違ってきます
僕の場合、摘出手術から3年が経ちますが、今でも食べる量や時間にはかなり注意しなければいけません。

また、以前と同じ働き方も難しくなり、勤めていた会社も辞めました。『ダンピング症候群』(食べたものが小腸に一度に流れ込むことで起こる症状)が起こり、異常な量の汗をかいたり、倦怠感、めまい、腹痛、頭痛といったトラブルが突然起こるようになったからです。

( 日本臨床外科学会HP http://www.ringe.jp/civic/igan/igan_13.htmlより)

以前と同じ生活が送れなくなることへのストレスの感じ方は、患者さん本人が何をどのくらい大切に考えているかによって違うだろうと思います。誰にでも当てはまる対処法は提案できませんが、『時間』と『慣れ』が解決してくれる部分は小さくありません。

僕も初めのうちは、「今まで当たり前だったこと」ができなくなることに、その都度ショックとストレスを感じていました。けれど現在では、「自分はそういう体なんだ」くらいに考えています。

何をすると調子が悪くなるのか」「悪くなったときはどうすると回復するのか」がだんだん分かってあらかじめ対策することができるようになり、この体との付き合い方を少しずつ覚えてきたからです。

例えば、

  • パンを食べるとダンピングが起こりやすいので、外出時は避ける
  • げっぷが多く出ると感じたら、食事はやわらかくて腸に詰まりにくいものにする
  • 早食いにならないよう、食事の際、メールの返信を返したりテレビを観る休憩時間を作る
  • 血糖値が急激に上がらないように、サラダなどから食べる。
  • ダンピングの応急処置のため、糖分が補えるアメなどを携帯しておく

といった具合に、自分の新しい体の『クセ』と対処法がだんだんと分かってきます。

先回りして対策が出来るようになってくると、普段の生活の中で特にストレスは感じません

健康な人であっても「これ以上ビールを飲んだら気持ち悪くなるから、これで止めにしよう」「だるくて風邪っぽいから、食事は消化に良いものにして休もう」などと、体の不調にあらかじめ対策をしているのと同じ感覚です。

お酒の弱い人、体力のない人、アレルギーの多い人・・・
それぞれ苦手なことがあって、「僕はその内の多く食べるのが苦手な人なんだ」と考えています。

・・・とは言っても、これは手術からしばらく経った今だからこそ思えることかもしれませんね。
胃を切除したばかりの患者さんは、「これまで通りに食べられない」「栄養が摂れなくて体力も落ちていく」「食事を楽しめなくなった」と、どうしても「できなくなった」ことに意識が向かいがちです。

『時間』と『慣れ』が対処法と言うと、ご家族や周囲で支える身としてはもどかしく感じると思いますが、例えばこのブログのように、「切除した人が数年後どのくらい楽になってきているか」「トラブルをどう回避しているか」ということを一緒に知ることで、治療に前向きに臨む希望が持てるのではないかと思います。

また、「できなくなったこと」に目を向けるのではなく、「代わりにできること」を一緒に共有するのも良いですね。

「煮込んでお粥にすれば、お米も食べられるね」
「食べきれる量ずつ頼める回転ずしなら、外食も気軽にできるね」
などと、言葉に出して共有するようにしてみてください。

元の体を基準にして「あれができない、これもできない」と考えるのではなく、「新しい体はこれができるし、工夫すればそれだってできる」と考えられるようになると、本人も周囲も気が楽です。

  

次ページ:抗がん剤を飲むのがつらい、副作用がしんどいとき

次のページへ >

-心に関する話
-, ,

© 2025 名医も知らない胃ガン治療のホントのところ Powered by AFFINGER5