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治療・薬の副作用、後遺症への不安
ガンの治療というと、『抗がん剤治療』が頭にまず浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
よくドラマや映画などでは、「身体がやせ細る」「髪の毛が抜け落ちる」「肌ががさがさに荒れる」など、見た目に現れる副作用が特に描かれていて、そういったイメージの強い方が多いかと思います。
さまざまな種類の副作用を知っていくうちに、そのどれもが不安に思えて、抗がん剤治療自体が恐ろしくなってしまうかもしれません。
ですが、実際には、治療の副作用がどう出るかは、抗がん剤の種類や患者さんによってかなり差があります。また、進行具合によって治療方針も異なります。
例えばこれは、『TS-1(ティーエスワン)』と呼ばれる抗がん剤を服用したときに現れる副作用を示しています。枠内の数字は、10人服用したときに副作用が現れる人数です。
(大鵬製薬HPより https://www.taiho.co.jp/patients/ts-1/sideeffect/index.html#sideeffect01)
TS-1の場合であれば、イメージされるような『脱毛』の副作用は、実際にはあまり起こらないことが分かりますよね(10%未満)。
まずは、使用する抗がん剤に起こりやすい/起こりにくい副作用が何かを知り、有効な対応策を考えることが重要です。
さまざまな場面を想定して準備を進めておくことはとても重要ですが、最悪の場合ばかり話し合って、患者さん本人をむやみに不安にさせてしまっても仕方がないような気がします。
「副作用が見た目に現れるようだったら、職場の人には面会を遠慮してもらう?」
「もし放射線治療が必要になったら、△△病院の評判が良いみたいだよ」
など、前もって確認しておくべきことについては落ち着いて話し、周囲があまり悲観的になり過ぎないようにするのが良いと思います。
手術の傷が痛むとき
シンプルですが、つらかったことの一つです。
手術当日、痛さのあまり消衰し、ナースコールのボタンを押す指にすら力が入らなかったことを鮮明に覚えています。(いま考えると嘘のようですが、心の中で「3・2・1……押す!」と唱えないと押せませんでした。笑)
痛みは、腹腔鏡手術であるか開腹手術であるかによって、また、体質によっても全然違います。
腹筋の付いた若い男性が、痛く感じやすいそう。逆に、全然へっちゃらそうに歩き回れる人もいるみたいです。
術後は、寝て安静に休むのではなく、実は、早いうちから身体を動かすことが大切です。病院では、『早期離床』という言葉が使われています。
体を動かして代謝を上げることで傷口の治りを早め、さらに、腸が癒着したり腸閉塞を起こす合併症リスクを下げることができます。
術後48~72時間は腸の働きが鈍っているので、手術後3日間が特に肝心です。ベッドから下りる、廊下に出る、お喋りをしながらスロープや階段を上り下りするなど、少しずつで良いので動ける範囲を広げていきます。
お見舞いに行ったときは患者さんが楽しめる『散歩コース』を提案してみるのも良いかもしれません。
その際、患者さん本人が「痛すぎて動けない」と言う場合には、『医療用麻薬』が使用できないか、先生に相談してみてください。
『麻薬』と聞くと、「危ないんじゃないの?依存性はないの!?」と心配になってしまいますが、よくニュースなどで報道される不正麻薬とは違い、薬物中毒などのリスクはほとんどありません。
(参考:シオノギ製薬HP http://www.shionogi.co.jp/tsurasa/treatment/opioid/)
実際に僕も医療用麻薬の一種であるモルヒネを注射してもらいましたが、健康を崩したり中毒症状が出るようなことは少しも起こっていません。のたうちまわるような痛みが10分ほどで和らぎ、しばらくすると歩けるようにまでなりました。
看護師さんの説明では、「痛みが出ないように安静にしているより、薬で痛みを抑えてでもどんどん動く方が回復も早く、その後の合併症リスクも下げられる」とのことでした。
医療用麻薬については、事前によく調べておくと良いと思います。その場になってから先生に説明を求めたり、「麻薬なんて使って大丈夫かな?」と家族で相談を始めたら、痛みを意味もなく我慢させ続けることになります。
そこまでの痛みが出ないのが一番ですが、強い痛みが出たときには医療用麻薬を使う可能性があるということを知っておき、「医療用麻薬がどういう作用で痛みを抑えるのか」「使うことに抵抗がないか」など、家族の間で事前に確認しておくと安心ですね。
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現在30歳で1児のパパ。25歳のとき胃にステージⅠBの癌が見つかり、胃のほとんどと仕事を失う。
自分自身が患者として苦しかったことや、それをどうやって乗り越えてきたかなど、胃がん患者やその周囲の人に向けて「今より生きやすくなるためのヒント」を伝えられたらと、ブログを運営しています。