こんにちは、ぽこパパです。
2015年9月にガンが見つかり12月に手術を受けてから、来月で5年が経過します。おかげさまで、無事に30歳になりました。
ガンの治療においては「治療から5年間が一つの節目」と言われているので、この5年間の経験談を中心に、5年が経過して良くなったことと、今もうまくいかないことについて整理してみようと思います。
あくまで一患者の経験談ですが、治療後の生活のイメージの一つとして参考にしてもらえると嬉しいです。
状態や治療内容の詳細は、〇〇のページを確認してください
このページに書いてあること(目次)
治療から5年後に良くなったこと
思いっきり運動ができるようになった
現在、走ったりスポーツをすることは、ほとんど問題なくできています。元々趣味であったテニスを思いっきりしたり、現在3歳になる息子と一緒に公園を走ったりできるようになったことは、もっとも嬉しいことの一つです。
手術直後は、体重・体力ともに激減していて、スポーツどころではありませんでした。体重は半年間で69キロから52キロまで落ちましたし(ちなみに身長は170cm)、100メートルほど歩いただけでお腹が痛んでしばらく歩けなくなるということが、一日に何度もありました。
当時、妊娠していた妻とよく散歩に出かけていましたが、数十メートル歩いてはお腹を押さえてうずくまる僕と、背中をさすってくれる妻という、周囲からは「逆だろ!」とツッコミを受けそうな光景でした。笑
5年間トラブルなく順調だったわけではなかったですが、3年ほど経ったころから食事を摂ることにも少しずつ慣れてきて、徐々に体重は増加。筋肉と体力も少しずつ戻ってきました。
また、歩くとお腹が痛んでいたことは、手術後、腸がよじれた形で癒着(ゆちゃく)し、食べ物が詰まりやすくなっていたことが原因だと判明しました。ふたたび腹腔鏡手術を受けてよじれを直してもらうとともに、「こういう食べ方をすると腸が詰まりやすいな」「こういう感覚のときは食事を減らした方がいいな」ということを覚えてきたことで、運動によってお腹が痛む場面はぐっと少なくなりました。
ご飯が食べられるようになった
誤解のないように言っておくと、「元通りに食べられるようになった」という意味ではありません。手術前のように「特盛で!」と注文することはもう二度と無理でしょうし、食べられなくなったり、かなり気をつけて食べないと怖い食べ物もいくつかあります。
ただ、いくつかの点を注意していれば、日常生活で食事をする分にはあまり困らなくなりました。別の言い方をすれば、「困る食べ方」を避けられるようになったとも言えます。
食事の量の問題で言えば、一度に多くの量は食べられないので、今でも一日4食を中心にしています。また、これまでにダンピングや腸閉塞が起こりやすかった時間にたくさん食べることは避け、その分、起こりにくい時間の食事に栄養摂取をすることを意識しています(僕の場合は夕方以降に起こりやすいです)
また、「ちょっと調子が変だな」「お腹が張っている感じがするな」と思ったら、食べ物はもちろん、水分も極力抜いてしばらく様子を見るようにします。また、腸の動きを活性化するための漢方を服用したり体操をしたりすることもあります(体操のやり方についてはまた記事にして紹介します)
そういった工夫によって、食事によるトラブルやストレスはかなり小さくなりました。
寝つきが良くなった
体が痛くて、眠れなかった時期がありました。
健康な方には「そんなバカな」という感覚かもしれませんが、仰向きで寝ようとすると薄くなったお腹の皮があばら骨に刺さり、横向きで寝るとひざとひざの骨がぶつかり・・・と皮下脂肪までギリギリに痩せ落ちた体は、ただ布団に横になっているときですら痛みました。
痛む部分にクッションを敷いてみたり、ひざとひざの間にタオルを挟んでみたりと毎晩さまざまな工夫を試してみましたが、「これで解決」という方法は結局見つかりませんでした。
現在体重は59キロまで戻り、当時より筋肉や皮下脂肪も付いてきたと思います。最近では当たり前のような感覚になってきていましたが、布団に入ってすぐに眠れるというのはすごくありがたいなーと感じます。
ガン患者だということを認めて向き合えるようになった
これは精神的な変化ですが、5年間の治療を経て最近ようやく、「胃にガンがあったんだ」「胃を切ったことで普通の人よりできないことが多いんだ」と、事実を正面から受け止められるようになってきました。
「病気に負けずに前向きに考えよう」という言葉をよく聞きますが、この「前向き」という言葉には、2通りの意味があると思います。
①悪いことばかりを考えず、落ち込まずにポジティブな気分でいようとすること
②目の前の問題を受け止めた上で何ができるかを整理し、解決や改善に向けて行動していくこと
僕の場合、前者の意味ではとても前向きでした。
元々の性格もあるのでしょうが、ショックを受けて落ち込んだり悲しんだりすることはほとんどありませんでしたし、「きっとお医者さんの見立てほど悪いことは起こらないだろう」「なんだかんだ言って大丈夫だろう」と、どこか能天気な考えがありました。
ですが、5年経った今そのころの自分の心境を振り返ってみると、「ガンになったという事実に真剣に向き合うことを避けていた」ようにも思えます。つまり、②に書いたように、がんになった状況を正面から受け入れた上で、解決や改善のための方法を調べたり実行していく意味では「前向き」でありませんでした。
「できること」「できなくなったこと」「今後も二度とできるようにはならないだろうこと」を整理して、認めるのが怖かったのだと思います。
たしかに治療を選択し進めていく段階では、まずは何よりもポジティブでいようとする心構えはとても大切だと思います。「どうして自分がこんな目に」「どうせ治らない」と塞ぎ込んでいるばかりでは、有効な治療をお医者さんにお願いすることすら困難です。僕自身も、ポジティブでいようとしたからこそ、抗がん剤が始まった期間も食事が怖かった期間も、乗り越えられたのだと思います。
けれど、ポジティブでいるだけでは乗り越えられない問題も、当然あります。食べられないものは食べられないし、体調が悪いときはどうしたって良くならない。
だから、どこかで「苦手になったこと」「できなくなったこと」「元の体とは違っていること」を認めること、そして「今の体でどうやったら良く生きていけるか」を考えていくことが必要です。
「①ポジティブでいようとする前向きさ」で病気のショックを乗り越えた後は、「②事実を受け入れて、今の体での最善の生き方を考えていく前向きさ」を持っていく必要があります。
僕の場合は、5年たってようやく自分の体の変化を認められるようになってきました。職場や周囲にもガンで胃を切ったことを説明した上で、「自分はこんなことが苦手だから、こんな場面では助けてほしい」ということを伝えられるようにもなり、ずいぶんと暮らしやすくなってきました。
治療から5年たっても苦しいこと
次に、「5年経っても良くならないこと」について整理します。また、実際に僕自身がどんなところに気をつけて生活しているか、トラブルが起きたときにどんなことを行っているかをまとめています。
これも「あくまで僕の場合」という感じで参考にしてほしいのですが、「あぁ、治療を受けても苦しいんだな」ということではなく、「こうやって工夫してなんとか乗り越えていけるんだな」というところを参考にしてもらえると嬉しいです。
食後に具合が悪くなること
胃を切った方のトラブルとして、ダンピング症候群(前期/後期)と腸閉塞(腸イレウス)の2つが多いと思うのですが、僕の場合、治療後は特にダンピング症候群に苦しみました。10回を食事をしたうち7~8回は起こっていたと思います。
3年がたったころからは月に2、3回程度にぐっと減りました。起こったときも「さっき食べたおやつが原因っぽいな」とか「ちょっと急いで食べすぎたかな」と原因が分かることがほとんどですし、「もうすぐ具合が悪くなりそう」と5分前くらいからなんとなく分かるようにもなります(さーっと血の気が引いていく感じがします)
低血糖の対処としてアメなどの糖分を食べると良いと言われていますが、僕の場合、糖分を摂ってから3~5分くらいで楽になるので、「変だな」と気付いたタイミングですぐに対処しておけば、あまり問題ありません。
具合が悪くならないように気を付けていること
どうしてもタイミングがずれてしまうことや、1日に続けてダンピングが起こることが今も稀にあります。ダンピング症候群の症状の一つである冷や汗がだらだらと流れてきて周囲から心配されたり、具合が悪くて仕事に戻れなかったりという場面では、「もう・・・不便な体だなぁ」とやっぱりどうしても落ち込んでしまうこともあります。
10回中7、8回もダンピングに苦しんでいたころよりはだいぶ楽になりましたが、「 月に2、3回のペース以下よりも減らすことは難しいと思う」とお医者さんや栄養士さんからも言われているし、自分自身でもそんな感覚がしています。
などできる範囲のことは尽くし、あとは「月に数回おかしくなっちゃう体なんだ」と割り切って付き合っていくことにしています。
食べ物やガスが腸に詰まりやすいこと
上ではダンピングについて触れましたが、お腹が張って苦しくなることや腸閉塞の痛さで救急車を呼んだことも数回ありました。
頻度としてはダンピングよりも少ないのですが、
四つんばいになって動けなくなるくらい痛むこと
「これをすれば治る」という対処法がないこと(痛みがマシな体勢で数十分~1時間ほど耐えしのぐしかない)
「最悪また入院してお腹を切る」という恐怖心があること
の3つを考えると、個人的には腸が詰まることの方が心配です。
腸が詰まらないために気を付けていること
腸閉塞が起こらないための日ごろの対策として、次の4つのことを行っています。
繊維の多い食べ物や、お腹の中で水分を吸いやすい食べ物(パン、クッキーなど)に注意する
「調子が悪いかな」と思ったら、余裕をもって漢方や下剤を処方してもらう
意識して歩く。長時間椅子に座り続けない
げっぷやおなら、便意をなるべく我慢せず、こまめにトイレに行く
日頃これらに気をつけていても、どうしても腸が詰まるトラブルが起こることはあります。お腹に違和感や痛みが出たときに僕が行っていることは、次の3つです
食事・水分を抜く
腸を動かす体操をする
楽な体勢でしばらく我慢する
我慢せずにすぐに救急車かタクシーを呼ぶ
食事・水分を抜く
お腹が硬く張る感じや突っ張る感じがするなど「変だな」と思ったら、まずは1食か2食程度、食事を抜いて様子を見ています。すでにお腹の張りを強く感じるときは、可能な限り水分も抜いています。
腸を動かす体操をする
YouTubeに動画があったので参考にしてください。
楽な体勢でしばらく我慢する
僕もその時々で違うので「この体勢が楽です」とは紹介できないのですが、腰を曲げてひざに手をつく/しゃがみ込む/四つん這いになる/横向きで寝転ぶ、あたりの体勢を試しているうちに痛みが引いてくることが多いです。大抵は20分程度、長いときでは2時間近く我慢することもあります。
我慢せずにすぐに救急車かタクシーを呼ぶ
③番の「しばらく我慢する」と矛盾してしまいますが、「あ、これは我慢できそうにないぞ…!」と思ったときは下手に我慢をせず、早めに救急車を呼んでしまう方が安全です。
救急車が来て病院に着くまでに時間もかかりますし、走行中の救急車の中ではシートベルトで固定しなければいけないため、体の角度を変えたりすることが困難です。加えて、かかりつけの先生やこれまでの治療歴などについて救急士の方に説明しなければならないので、その大変さも考えると、痛さに耐えられる段階で救急車に乗せてもらった方が良いかと思います。
「大ごとになるから救急車なんて絶対呼びたくない」と思われる方の気持ちも痛いほど分かるのですが、これまで何回も腸閉塞の痛みを経験をしてきた立場から言うと、
注意
対処が遅れたことで味わう痛みと恐怖>>>>>>>>救急車に乗る抵抗感
というくらい、ほんっとに痛いんです(笑)
「いつもより痛みが強いな」「痛みが強くなるペースが速いな」と感じたら、早めに対処をしましょう。
生活のハンディキャップを周囲に分かってもらえないこと
ダンピングや腸閉塞といったトラブルが今よりも多く起こっていたころ、障碍者手帳の取得について検討したことがあります。 「1日に何時間も横になったりしなきゃいけない体で、普通の人と同じように働くのは難しい」と思ったからです。実際、移動するにも食事を食べるにも、元の2~3倍の時間がかかっていました。
ですが、胃の切除によって障がい者認定を受けられるケースはごくごく稀で、重症なケースの場合に特別に認定が下りる程度。相談機関の方からは「ダンピングも腸閉塞も、本人の努力で予防できることだから、『障がい』というほどではないよね」という説明でした。
努力によって予防できるというのは、ある程度までは正しいかもしれません。早食いに注意していればダンピングは減らせますし、やわらかい食事を時間をかけて食べていれば腸が詰まるリスクも少なくなるでしょう。
でも、周囲が忙しく働いている会社の中にいれば、多少周りに合わせて食事を急がなければいけない場面もあるし、上司や取引先との付き合いで体に負担のあるものを食べる場面だってあると思うんです。
「本人がそうしたことだから」とも言えますが、それを「本人の予防する努力が足りない」と言うのは、僕には違和感があります。どんな状況でも食事のペースを守らないと努力不足?そもそも、そんなに忙しく働かなきゃいけない環境にいるのが努力不足?
障がい者認定を受けられなかったことについては僕の勉強不足でしたし、現在も働けているので良いのですが、そのときの言葉は「トラブルがある限り、あなたは努力が足りていない」と言われたようでショックでした(しかも専門機関から)。
胃を切った人は、胃のトラブルだけに100%注意を向けて生活していれば良いわけではありません。仕事がある人、家庭がある人、子育てがある人...体調と同時に、ほかのさまざまなことにも「努力」をしていなければいけない。そんな中で、つい早食いになってしまったりしてしまうことを「努力不足」として言われてしまうことは、結構しんどいなーと思ったりします。5年経った今も、そのあたりはもやもやしていたりします
(もし胃切除のトラブルに関して良い制度知っているよ、という方はSNSで教えてください!)
5年間経つと体に慣れてくる
2015年に治療を受けてから5年が経過したタイミングなので、今回「5年が経過して良くなったこと」「5年が経過しても苦しんでいること」という視点で僕自身の状況を整理してみました。
治療直後よりも良くなったこととしては、
・思いっきり運動ができるようになった
・食事のトラブルが減った
・寝つきが良くなった
・「できない」を受け入れられるようになった
改善されていてもまだ苦しいこととしては、
いまだに月に2、3回は食後に具合が悪くなること
食べ物が腸に詰まりやすいこと
生活を送る上でのハンディキャップを理解してもらいにくいこと
を挙げました。
もしかしたら、「5年経ってもまだまだトラブルが起こるんじゃん」「5年後も気を付けることが多いんだな」と、治療後の将来について不安にさせてしまったかもしれません。
たしかに、トラブルをゼロにすることも、まったく元通りの生活を送ることも難しいことは事実ですし、普通の人より生活の困難が多いことも事実です。
ですが、人間たくましいもので、
5年も生きていれば大概のことは結構慣れる
ということも言えます(お医者さんに同じことを言われたときは「んなわけねーだろ!」とイラっとしましたが、たしかに慣れました。笑)
最初は「栄養のため」と思って食べていた料理も、しばらく食べ続けていればそれが好みになってくるし、「こういう場面では具合が悪くなりやすい」といった場面を何度か経験して適切な準備と対処を覚えてくれば、恐怖心やストレスもずっと小さくなっていきます。
また、「前とは違うということを受け入れる」ことでも生きやすくなります。
「この体には、こんな食べ方が合うんだな」
「これは負担が多くて嫌がるんだな」
と、新しい身体のクセや好き嫌いを1つ1つ覚えてあげるつもりでいると、以前の生活と比較して落ち込んだりすることが少なくなるんじゃないかなと思います。
現在30歳で1児のパパ。25歳のとき胃にステージⅠBの癌が見つかり、胃のほとんどと仕事を失う。
自分自身が患者として苦しかったことや、それをどうやって乗り越えてきたかなど、胃がん患者やその周囲の人に向けて「今より生きやすくなるためのヒント」を伝えられたらと、ブログを運営しています。